PH1013 超広帯域遅延検波回路

  • 国内の光映像配信サービスに実装されており、約200万世帯のご家庭で使われています。
  • 導入事例を図1に示します。
  • 入力された多チャンネルの映像信号を一括して広帯域なFM信号(0.5G~5GHz)に変調します。それから光ファイバーを通して伝送します。
  • 光ファイバーを各宅内まで引き込みV-ONUで受信します。このV-ONUで電気信号へ変換し、広帯域なFM信号を多チャンネル映像信号へ復調します。
  • このV-ONU内で復調するために、弊社製品のPH1005およびPH1013が使用されています。
図1 超広帯域F/V(周波数/電圧)変換ICの導入事例

図1 超広帯域F/V(周波数/電圧)変換ICの導入事例

遅延検波回路の動作

  • PH1013製品で用いている、遅延検波回路の動作原理を図2に示します。
  • 遅延検波回路に入力されたFM信号はリミッタ回路(LIM)で振幅を一定のパルス信号に整形すると共に振幅方向の雑音を除去します。
  • リミッタ回路出力信号を2分岐し、一方を遅延回路(遅延時間:τ)を介し、分岐したもう一方の信号と共に排他論理和回路(EXOR)に入力します。
  • 排他論理和回路出力は、図3で示すようにパルス幅がτ(sec)で入力信号周波数の2倍の周波数となるパルス密度変調信号(PDM: Pulse density modulation) となります。
  • PDMの周波数を入力信号の2倍にすることで、信号電力を増幅し雑音を高周波側にシフトすることができたため、復調後のSNRを改善する効果があります。
  • このPDM信号をLPFを介して不要な周波数帯域での雑音を除去することによりFM信号が復調されます。
  • PH1013では遅延回路での遅延時間(τ)を5GHzの周期である200psの1/4にとなる50psとしています。
  • LPF通過後の電圧信号はPDM信号のパルス高×パルス幅×パルス周期に比例しますので、5GHzまでの周波数帯域で良好な線形特性を実現するには、5GHzまでの周波数帯域でTr・Tf特性も含めてパルス高とパルス幅を同一にする必要があります。
  • 本回路技術は、遅延検波回路以外にもToF方式レーダで用いられる短パルス信号の生成や、2つの信号の位相差(遅延時間)に比例した電圧信号を発生する位相比較器等にも応用可能です。
図2 遅延検波回路の原理図

図2 遅延検波回路の原理図

図3 信号図

図3 信号図

PH1013 規格化誤差率(FVエラー)

弊社では、入力周波数に対する出力電圧特性の線形性を確認するため、以下の算出式によって得られる規格化誤差率(FVエラー)を使用しています。

規格化誤差率の算出式

規格化誤差率=(Vo-(a×f+b))/a/f×100 [%]
Vo=出力電圧[V]
a=一次回帰直線の傾き(FV変換効率)
b=一次回帰直線の切片
一次回帰直線は、0.2GHzから5.0GHzまでの49点(0.1GHz間隔)から算出
弊社では、0.2GHzから5.0GHzを規格化範囲と呼んでいます。

ここで、図4に、規格化範囲における49点のFV特性の実測結果を青で、説明の便宜上作成した例1を赤で示します。どちらも、十分な線形性を持っているように見えますが、図5に示すとおり算出式によって得られたFVエラー特性は明らかに違います。よって、弊社では、線形性の確認に規格化誤差率を使用しています。

PH1013 図4

図4.入力周波数に対する出力電圧特性
(FV特性)

PH1013 図5

図5.入力周波数に対する規格化誤差率特性
(FVエラー特性)